木原稔
メニュー
外務委員会(平成二十一年五月八日)
委員会 外務委員会
実施日 平成二十一年五月八日
質問事項 条約クラスター弾に関する条約の締結について承認を求めるの件
国及びその財産の裁判権からの免除に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件
強制失踪(そう)からのすべての者の保護に関する国際条約の締結について承認を求めるの件
答弁

○河野委員長
 これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木原稔君。

○木原(稔)委員
 おはようございます。自由民主党の木原稔でございます。 本日は、三本の条約について順次質問をさせていただきます。
 まず、クラスター弾に関する条約について始めたいと思いますが、これまでに世界中で使用されていたクラスター弾及びその不発弾というものが、世界各地で一般市民に与えてきた被害、これは甚大なものであるという認識を私はしております。そのことは大前提とした上で質問をさせていただきますが、もともと武器というものは、殺傷能力が高いほど優秀なものであります。クラスター弾は、そういう意味でいうと極めて優秀な武器であるということが定義づけられます。しかしながら、特定の個体だけでなく、周辺の不特定の個体までも同時に破壊または殺傷してしまうというところから、さまざまな問題が起こっているのではないか、そのように考えるわけであります。我が国の防衛というのは、もう言うまでもなく、憲法九条に基づいて、専守防衛、これを国是としておりまして、防衛戦略によって我が国の防衛というものを担保しているわけであります。我が国は自衛隊の限られた戦力の中で、島国という極めて特異な環境の中、その海岸線を広域にわたってカバーしながら対処するということが求められております。幾ら兵器が近代化したとしても、地理的な条件というものは不変であります。そういった観点で、広域を制圧できるクラスター弾というものは極めて有効な装備でありました。上陸侵攻を担う敵にとってみれば、クラスター弾というのは大きな抑止力となり、日本にとっては、これまで十分にこれが機能していたのではないかな、そういうふうに分析ができるわけであります。
 こういった観点を踏まえますと、クラスター弾が我が国の安全保障においてこれまでに果たしてきた役割、意義というものはどのようなものであるか、これは防衛省に伺います。

○高見澤政府参考人
 お答えいたします。クラスター弾の意義につきましては、今先生御指摘のとおりでありまして、クラスター弾というのは、基本的には、密集の目標に対しても、移動中の目標に対しても、分散した目標に対しても、あるいは位置がよくわからない目標に対してもこれを攻撃することができるという意味で、非常に有効な兵器だというふうに思っております。 ただ、私どもは、専守防衛という観点で、敵部隊が上がってきたような場合に、それを通常爆弾で撃破できないような形で、広範囲で、しかも迅速に対応できるということで、抑止力として非常に重要な機能を果たしてきたというふうに考えております。

○木原(稔)委員
 やはり、これまではクラスター弾というものが、我が国の防衛戦略上、大変これは意義のあるものだったという答えがございました。冷戦崩壊後は、我が国は、これは平成七年の防衛大綱または平成十六年の防衛大綱、〇七大綱、一六大綱、これを定めた中で、一貫して、防衛力というものは削減する、そういった政策をとってまいりました。しかし、この冷戦崩壊以降の国際情勢が安定化に向かうという情勢認識に基づくものであったにもかかわらず、しかし、実際のところは、地域紛争が一層激化をしたり、また、ならず者国家というものが台頭してきたり、また、大量破壊兵器が拡散するといったこと、また、新たな脅威、つまりテロの脅威というものが増大をしたということ、安定化どころか、予測した情勢とは全く異なる方向でこれは推移してきたのではないでしょうか。もう、これは事実、現実だというふうに思います。我が国が軍縮政策をとってきた中で、周辺国を含む主要国は、冷戦直後はこぞって軍縮政策をとったものの、国際情勢の悪化を踏まえて、特に米国同時多発テロの発生以降は、各国とも軍事力の増加の傾向にあります。一九九八年の対人地雷廃止条約の批准のときもそうでありましたけれども、日本だけは周辺諸国の軍事力の動向を余り踏まえることなく、やや一方的に防衛力を廃棄または縮減してきたように感じます。今回のクラスター弾廃棄においても、我が国の安全保障上、周辺諸国の動向を考慮した対応を考えることがある程度必要になると思いますが、我が国の周辺諸国及び先進諸国のクラスター弾の現在の保有状況を、わかる範囲で御教示ください。

○高見澤政府参考人
 お答えいたします。クラスター弾の保有状況については、厳密に申し上げれば、すべて網羅的になかなか把握しがたいところはございますけれども、これまでのジェーン年鑑等、あるいはNGOなどでございますけれども、アメリカやロシア、中国といった大国のほか、我が国周辺におきましては、北朝鮮あるいは韓国といった国々がクラスター弾を保有しておりますし、また、アジアでは、インド、タイ、シンガポール、インドネシアというような、大体主要国は持っておるというふうに理解をしております。それから、ヨーロッパの関係でも、旧ソ連の国を初め、あるいは、主要国というのは大方クラスター弾を保有しているという国が多いというふうに承知をしております。

○木原(稔)委員
 クラスター弾の主要な生産、保有国であるところの国、主に米国、ロシア、中国、また北朝鮮、韓国、インド、あらゆる国が現在保有をしておるというところでございます。特に米国とロシアと中国というものは、生産国でもあり、大量に保有をしている国でもある。この三カ国について、本条約の加入の意思というものがこれはありませんね。しかしながら、本条約の二十一条1においては、今後、締結国は非締結国に対して加入するように奨励することとしています。日本は、これらの国に対して、具体的に、どのような機会にいかなる説得を今後行っていこうと考えているのか、伺います。また同時に、我が国は、CCW、特定通常兵器使用禁止制限条約、この取り組みも行っているわけでありますが、これは先ほど申し上げた三国、米国、ロシア、中国、これが加入をしているわけでありまして、むしろ私はこちらを注目しているわけですが、残念ながら、本年四月の第二回政府専門家会合でも結局進展は見られませんでした。このCCWにおいて、クラスター弾問題の交渉を今後日本が主導していく気持ちがあるのかどうか、あわせて外務省にお伺いします。

○伊藤副大臣
 お答え申し上げます。本条約においては、クラスター弾の禁止という法規範を国際社会の中において進展させて、また、議員御指摘のように、クラスター弾がもたらす人道上の懸念への対応に向けた国際的な協力、これを促進するものであります。日本政府としては、できる限り多くの国がこの条約を締結することが重要というふうに考えております。政府としては、非締約国に対して、この条約の批准等を奨励するとの第二十一条1の規定に従いまして、非締約国に対しこの条約の締結を働きかけていく考えであり、これまでも実際にこういう働きかけを行ってきているところでございます。また、CCWとの関連もありますけれども、我が国としては、この条約を締結する一方、同条約については、一部の有志国の主導により作成プロセスが開始されたという経緯もあり、御指摘のように、主要なクラスター弾の生産国及び保有国が署名していないという現実があります。その現実を踏まえつつ、もう一つの枠組みでありますCCWの枠組みにおいても実効的な国際約束が作成されるように、これまでもやってきましたけれども、引き続き積極的に貢献していく考えでございます。いろいろな国に働きかけておりますけれども、御指摘のように、米ロ中韓等に対しても実際的に働きかけを行ってきております。

○木原(稔)委員
 積極的に働きかけを行ってきたし、今後も行っていくということでありますが、なかなか、それに応じるかどうかというのは、これはまた別の問題であり、同時並行してさまざまなことを考えていかなければいけない、私はそのように認識をしております。しかしながら、我が国はどうしても専守防衛というのに基づいて安全保障を担保しているわけであり、また、抑止力を高める装備品を今後も保有するということ、これは極めて重要なことであります。クラスター弾は、先ほど申し上げましたように、沿岸部に着上陸する敵を広範囲に制圧することが可能な装備であり、海岸線の長い日本にとっては、これは、現在は着上陸侵攻という蓋然性が遠のいたといえども、北朝鮮による拉致の例もあります。これはすべて沿岸で起こったものであります。日本国内で拉致された方はそうであります。我が国の抑止力の一端が欠けたと言ってもこれは過言ではないと思います。
 クラスター弾廃棄が我が国の防衛に及ぼす影響に関する認識を再度お伺いしたいのですけれども、何か広域の制圧能力を代替装備品で補うことができるのかどうか、クラスター弾廃棄に伴う我が国の抑止力低下を補うための政策を何かお持ちであるのかどうか、防衛省にお伺いします。

○高見澤政府参考人
 お答えいたします。クラスター爆弾に限りませんけれども、いろいろな装備につきましては、技術革新等の問題、あるいはこういった規制の問題、あるいは突然故障して全く長期間にわたって使えなくなる、そういうふうなウエポンシステムに穴があくということは当然考えておかなければいけないことでございまして、ある一つの機能がなくなったからといって、それで抑止力の低下を放置するということは許されないというふうに考えております。その意味で、クラスター弾に関する条約が我が国について発効いたしました場合には、すべてのクラスター弾の使用が直ちに禁止されるということでございますので、私どもとしては、我が国の防衛に遺漏なきを期すという観点から、できるだけ早くこのような機能を補完する、全部ではございませんけれども、一部補完するための精密誘導型の装備品の導入をするでありますとか、あるいは迅速に大量に攻撃できるような、そういった発射機能にすぐれた、火力を集中できるようなシステムを整備するというようなことが重要になるというふうに認識をしております。

○木原(稔)委員
 現在日本が持っている四種類のクラスター弾の合計は、これは装備の段階で二百七十六億円ということでありました。廃棄のための調査費というのが、これが二億円もう付いております。実際の廃棄に係る費用は、これから算出することになると思いますけれども、二百億円ぐらいかかるのではないかと言われております。代替兵器の導入の予算というのは、もうこれも平成二十年度の補正予算で約六十億円、二十一年度の予算では六億円ということで、代替兵器導入について準備は整いつつある状況ではないかと思うのですけれども、ことしは防衛大綱の見直しの年でもありますが、そういった防衛力の低下、または、それを補完するものということ、そういったことを総合的に考えた上で、今回の防衛大綱及び中期防の見直しの中でクラスター弾廃棄を踏まえた議論を行うべきだと感じておりますが、その辺、御見解はいかがでしょうか。

○高見澤政府参考人
 お答えいたします。御指摘のとおり、平成二十年度の補正予算におきましては、精密誘導能力を有する装備品ということで、M31ロケット弾あるいはレーザーJDAMというものを導入し、それを二十一年度予算でもお願いしているところでございます。これからの戦い方というのを考えますと、戦闘様相も変化してまいります、そして装備体系の変化も必要でございますので、私どもとしては、ネットワーク化、つまり、情報をできるだけ迅速に集中してそれを有効に活用していく、それで、しかも精密誘導能力を持つものを持って効率的、効果的に対応していくというようなことを考えております。いずれにいたしましても、大綱、中期防の検討の中では、こういったクラスター弾の規制ということも踏まえまして、また、ほかのいろいろな技術進展の動向も踏まえましてしっかりと検討した上で、十分な計画が立てられるように努力をしていきたいというふうに考えております。

○木原(稔)委員
 精密誘導弾というお話が出ましたが、これはピンポイントで目標の攻撃を行うことができるというもので、いわば点の攻撃であります。クラスター弾というのは、これは面の攻撃だったわけでありまして、したがって、防衛力の低下というのは、これはやはり免れることができないわけでありますので、しっかりとそれにかわる、補完すべき予算の獲得と、また装備の配置というものをしっかりと行っていただきますように、よろしくお願いいたします。
 この条約に関して最後の質問になるのですけれども、本条約の二十一条の3には、締約国以外の国との関係として、軍事協力、軍事行動を行うことを認めております。したがって、米国は本条約に加盟していないとしても、自衛隊と在日米軍との関係においては大きな影響はないというふうに思われます。米軍の日本国内でのクラスター弾の保有、また日米共同演習などでは使用は可能なわけであります。その認識でいいのでしょうか、確認のためお伺いします。
 また、本条約の加入に当たって、米軍または米国政府には事前に協議をしたのかどうかということもあわせて質問をいたします。といいますのは、我が国と米国とのクラスター弾に関する認識の違いが今後の日米安保体制に悪影響を与えることがないのかどうか危惧しましたので、質問いたします。これは防衛省と外務省とそれぞれお伺いします。

○高見澤政府参考人
 お答えいたします。日米安保条約に基づきまして日米間ではいろいろな問題について常日ごろから、計画の前あるいは訓練の前、あるいはいろいろな共同開発とか共同研究とかやっておりますけれども、この問題につきましてもいろいろと協議をさせていただいてきているところでございます。私ども、こういった協議を通じまして、いずれにしましても日米安保体制の円滑な運用ができるように最大限の努力をしていきたいと思っておりますし、これまでの協議の中あるいは条約の考え方からいたしましても、こういった日米関係に大きな影響が出るというようなことはないというふうに認識をしております。

○中曽根国務大臣
 委員から御指摘がありましたように、米国はこの条約を締結しておりませんが、米軍に対しましてこの条約の義務が課されるということはないわけでございます。この条約は九条におきまして、締約国に対し、この条約が禁止する活動であって、自国の管轄または管理の及ぶ範囲にあるものを防止し、及び抑制するため、あらゆる適当な措置をとるよう求めているわけでございますが、米軍によるクラスター弾に係る活動はこれに該当いたしませんので、我が国はこの活動を防止し、また抑制する義務を負っているわけではございません。さらに、二十一条の3及び4におきましては、締約国は、みずからクラスター弾を使用、貯蔵、移譲しないことなどの一定の条件を満たす限り、締約国に対して禁止されております活動を行うことのある非締約国との間で軍事的な協力及び軍事行動を行うことができる旨、規定をされております。以上のようなことから、米軍の活動に支障が生じるということはないわけで、日米安保体制に悪影響が出るとは考えておりません。また、政府といたしましては、我が国の防衛に万全を期す、そういう観点から、米国とも緊密に協議を行ってきておりまして、今後とも米国とは引き続き緊密な協議、協力をしていく考えでございます。

○木原(稔)委員
 ありがとうございました。引き続き、日米同盟に関しては十分に協議の上、しっかりとお互いの役割を果たしていただきますようによろしくお願いいたします。
 続きまして、国及びその財産の裁判権からの免除に関する国際連合条約、国連国家免除条約と略称で言われておりますこの条約について質問させていただきます。これは二国間条約ではなく国連を舞台とした多国間条約であるために、相当の年数がかかったということはいたし方ないと私は理解をできます。しかし、お互いに国連各国の中で議論を進めていく中で、先進国と途上国の間で、おのおのの立場で利害やまた主張が交わされたというふうに聞いております。実際に条約が発効する中で、その内容が妥協の産物的な決着をしていないかということが、年数がかかった分、また各々の主張が強かった分、非常に心配になってくるわけであります。例えば本条約は、いずれの国も、自国及びその財産に関し、他国の裁判所の裁判権から免除されることを一般原則としつつ、例外として免除されない範囲等を定めているわけでありますけれども、免除されない一例として商業的取引というのが挙げられております。この商業的取引であるかどうかということの判断基準が、先進国と途上国の間で二説あるということを聞きました。一つは行為性質説というもの、もう一つが行為目的説というものであります。ここではあえてその具体的な内容は私からは説明いたしませんけれども、日本はどちらの説をとっているのか、また他の加入国というのはどういう立場なのかということをお伺いしたい。
 また、本条約の本旨はそもそも、国及びその財産がいかなる場合に他国の裁判権から免除されるのかという、民間の企業が予見可能性を高めるということで極めて重要なものであるという理解を私はしているんですけれども、二説あるということになると判断基準もそれぞれ違うということになり、本旨と合致しているのかどうかということもこれも疑問でありますので、その辺をお伺いいたします。

○北野政府参考人
 お答え申し上げます。今委員から御指摘ありましたように、この条約におきまして、商業的な取引から生じた裁判手続については、国家が他国の裁判権、民間との関係で免除が認められない、そういうふうなことになっているところでございます。また、それでは商業的取引というのは一体何なのかということにつきまして審議経緯の中でさまざまな議論があったということも、今委員から御指摘があったとおりでございます。そのさまざまな議論をした結果として、この条約の第二条の二項において、以下申し上げるような考え方をとったということでございます。第二条二項におきまして、契約または取引が商業的取引に該当するかどうかということを判断する際の主たる基準として、契約または取引の性質を考慮するという性質基準を採用するということでございます。そして、性質基準のみによれば商業的取引と判断されることになるものであっても、公的な目的で行われる契約または取引については商業的取引と判断されることが適当でないと判断される場合もあるだろうということから、契約または取引の目的も考慮するという目的の基準も補完的に採用するということでございます。したがいまして、繰り返しになりますけれども、性質基準が主、そして目的基準についてはこちらは補完的という形で決着をしたということでございます。今委員の方から、各国についてはどのような形でやってきたかという点についてお尋ねがございました。我が国につきましては、これまでの判例の中で主に性質に着目をするという考え方をとってございます。それから米国におきましては、国内法において性質基準をとっているというところでございます。また、審議経緯の中で、途上国を含めまして、目的基準についても含めて考えるべきだというふうな主張があったということも先ほど申し上げたことと関連するところでございます。それでは、今後どうなるかというところでございますけれども、我が国を含めましてこの条約の締約国となった場合には、従来の国家実行というものにかかわらず、条約の定める、先ほど申し上げた考え方、すなわち性質基準を主とし、目的を補完的に考えるという考え方に従ってやっていくということになるということでございます。

○木原(稔)委員
 私は昨年、トルコ共和国を訪問いたしまして、そのときに視察をしたところが一カ所ありまして、それはボスポラス海峡の横断鉄道建設といって、今アジア大陸とヨーロッパ大陸に分断されているトルコの、海底トンネルを掘って地下鉄を通そう、そのような工事だったわけであります。トルコはそういった技術がないので、日本にそのプロジェクトをゆだねた。国家プロジェクトでありますけれども、それを日本の民間の企業、建設会社が受注したということでありますが、そのときに、その建設会社からお話を伺ったのですけれども、当然大プロジェクトであり、技術者が二十五名必要なんだと。しかしながら、トルコの基準といいますか、トルコの外務省が十名分の労働ビザしか発行してくれないと。技術者が二十五人必要にもかかわらず十名分の労働ビザしか発行してくれない。これは技術者の労働組合というのがあって、外国の建設会社及び外国からの企業がトルコ国内の事業を受注する際には外国人の技術者の上限というのが決まっておって、それが十名ということであって、これはその建設会社、納期に間に合うか、工期が大変遅れていて焦っておりました。まさしくこれも民間の企業とトルコ政府との商業的取引だろうと思います。こういったことが世界各国で行われており、また、この条約を批准する国も今後ふえてくるかと思いますが、各加入国が共通の理解のもとに民間との取引が円滑に行われて、今後もこの条約の内容が余り説が分かれることなく成熟していくことを望みますし、日本もそれをぜひ主導していただきたい、そのように思います。
 最後に、三本目の条約ですけれども、強制失踪(そう)からのすべての者の保護に関する国際条約、強制失踪条約に関しまして質問をさせていただきます。この条約が作成された背景を教えていただきたいのですけれども、世界各国で起きていた、または今起きている自国政府による大量の自国民の拉致事件や失踪事件、これはどんなケースがあるんでしょうか。この条約は、強制失踪条約というこの文言だけを見ると、我々日本人はどうしても北朝鮮による日本人拉致問題と結びつけてしまいがちなので、まず冒頭に、その背景、この条約をつくるに至った背景というものをお伺いします。

○伊藤副大臣
 お答え申し上げます。個人の身体の自由及び安全を基本的人権として保障する条約としては、既に市民的及び政治的権利に関する国際規約、いわゆる自由権規約というものが存在しますけれども、その規約の存在にもかかわらず、特に一九七〇年代に軍事政権下の中南米諸国、例えばアルゼンチン、チリ、こういった国において、一般の市民等が国家権力により身体の自由を不法に剥奪された上で秘密裏に拘禁されるという事例が見られたわけでございます。そういう背景といいますか、こういったことに対する反省から、このような国家による不法な拘禁を禁止するとともに、かかる行為を強制失踪犯罪として、それを行った個人を処罰することにより再発を実効的に防止するための新たな国際文書を作成する必要性が強く認識されるようになりまして、今回の条約ということになったわけでございます。

○木原(稔)委員
 どうしても我々はこの条約について、北朝鮮による日本人拉致問題、これの解決の手段の一つにならないかどうかということを期待してしまうわけでありますけれども、しかし、この条約、中身を一見しても、個別の拉致問題の解決につなげるには限界があるように思えます。理由は、遡及適用が認められないということが一つありますし、また、北朝鮮自身が本条約を締結しない限りやはり実効性に乏しいということであろうかと思います。 それでも、やはり我が国が一番の問題として取り組まなきゃいけない、また解決を急がなければいけないこの拉致問題に限って言えば、本条約を締結する意義は、拉致に立ち向かう我が国の力強い意思を国際社会に示すこと、これは十分意義があることだと思います。 そうなると、実は我が国の署名は二〇〇七年の二月六日でございましたので、二年前の通常国会でも提出をしていち早く締結国になることができたわけでありますけれども、実際にことしの通常国会になってしまったということでございますが、そのあたりの御説明をお伺いいたします。

○廣木政府参考人
 お答え申し上げます。ただいま御指摘ございましたとおり、二〇〇七年の二月に本条約の署名式において署名させていただいたわけでございます。また、御指摘がございましたように、この条約の意義でございますけれども、拉致を含む強制失踪が犯罪として処罰されるべきものであることを国際社会において確認するとともに、将来にわたって同様の犯罪が繰り返されることを抑止するという意味で意義があるというふうに考えておるわけでございます。それで、本条約は現在未発効ではございますが、このように意義が大きいということで、我が国として可能な限り早期にこの条約を締結したいと考えておりました。条約上の義務の国内実施の具体的なあり方の検討、あるいは類似した規定ぶりを持つ他の条約の例も踏まえた訳文の作成等の作業を進めてきたところでございまして、こういったことから、署名から二年かかりましたけれども、これらの作業が終了したということで今国会へ提出したものでございます。

○木原(稔)委員
 さまざまな手続の結果、二年後になったということでありますけれども、私は、あらゆる分野で、あらゆる場面でこの拉致問題に立ち向かう我が国の強い姿勢を示す、そういう機会があるのであれば、それは貪欲に求め続けていかなきゃいけないし、迅速に対応し続けなければいけない、そのように思っておりますので、この条約に関しては賛成という立場でこれからも議論を重ねていきたいというふうに思っております。終わります。