台湾総統選挙の結果は、国民党・馬英九氏が689万1,139票(得票率51.6%)、民進党・蔡英文氏が609万3,578票(得票率45.6%)でした。約80万票の差となりましたが、まさに国論を二分した選挙だったと言えます。
昨年、台湾の教育関係団体が高校生から大学生、専門学校生までを対象に調査したところ、89%が「最も非友好的な国」として嫌ったのが中国でした。台湾を国際的孤立状態に追い込んできた中国を好きだと言う台湾人の若者はいません。
また、馬氏は選挙演説の中で中国との「和平協定」締結の可能性を発表しましたが、その途端に大反対が起こり、馬氏は慌てて、交渉前に住民投票で民意を問うと約束せざるを得なくなりました。新中派の馬氏が再選されたからと言っても、台湾の多くの人が「ひとつの中国」を信任した訳ではないのでしょう。
馬氏再選の最大の功労者は中国共産党です。現在、大陸で仕事をしている台湾人ビジネスマンは約100万人。その多くの「有権者」に帰国を促しました。大陸から帰国したビジネスマンは当然のように国民党に投票します。若者世代とのギャップです。また、民進党が強い地域に中国共産党がテコ入れしたことも大きかったようです。具体的には、中国側は台中や台南の農産物や工業製品を集中的に買い上げました。
中国が共産党一党体制で覇権主義を掲げる限り、台湾が現状を超えた形で統一を進める事はないと信じたいものです。しかし、イデオロギーを封印した経済的な連携と称して、中国側への投資を急激に増やし、中国側も台湾に徐々に資産を形成していることは、独立国・台湾のアイデンティティーが急速に失われていると感じざるを得ません。
早くも選挙翌日から蔡英文氏への弾圧が始まっています。死者に鞭打つ中国大陸文化そのものに映ります。国民党が中国共産党のような強権的な独裁政党に豹変しないように、これからの4年間、民主主義を愛する台湾人はしっかりと監視しつづける必要があるでしょう。