戦後日本は驚異的な高度経済成長を果たし、「一億総中流社会」という社会を築き上げました。。「裕福な社会主義国」だったという人もいます。ところが、バブル崩壊後、低成長が続く中で、賃金・資産・消費に関する格差(所得格差)が拡大しているという見方が広まっています。具体的には、近年ジニ係数の上昇という現象が見られます。(ジニ係数とは所得・資産分配の不平等などを示す指数。0から1の間の値で、1に近づくほど不平等度が高くなるとされる。)
しかし、以前と比較して本当に格差は拡大しているのか、格差とは何のことを指すのか、疑問に思うことがあります。格差が「所得格差」のことを指すのならば、ジニ係数は上昇しているが、統計データによる高齢化世帯の増加・世帯人員の減少など世帯構造が変化していることを勘案すれば、所得格差の拡大は、データとして確認することはできないからです。
非正規社員の増加は人件費単価削減ではなく容易なリストラを可能にできる企業側のメリットが理由です。企業の人件費単価がそれほど下がっていないということは人材派遣会社が大きな収益を上げていることとリンクします。しかしながら、非正規社員は身分保障でリスクを負う分、所得格差に大きなインパクトを与えるものではありません。
また、格差が「地域間格差」だというのであれば、景気回復の過程において、大企業を抱える都会から中小企業・下請け企業を抱える地方へ順次に波が訪れる過渡期に「格差」を感じることはありえることでしょう。逆にバブル崩壊の際も、地方には不況の波が随分遅れてやってきたのは事実です。
一方、将来の所得格差につながるであろうニート・フリーター・非正規化する若年層が増加していることは正しいデータです。それは、あくまでも将来の話であって、現在の「格差」と直接の因果関係はありません。
それでは、どうして世間が「格差社会」を感じてしまうのでしょうか。それはマスコミが、これらの事実を過剰報道しているために、あたかも既に大きな所得格差が存在しているかのように思ってしまう人が多いからではないでしょうか。正確には今は「格差社会」とまでは言えず、これからそうなる可能性を含んでいるというのが論理的です。
過度な「格差社会」に陥ることが無いように政治が行うべきことは、①子ども達に勤労の精神を教えていくこと。②引き続き景気回復を図ること。③人材派遣会社の規制などの改革を実行し国民が潜在能力を発揮できる環境をつくること。この3つの基本方針を念頭に、「格差」という言葉に惑わされることなく施策を講じて参ります。