政府金融を考える

 

「資金の『入り口』の郵政民営化だけではなく、『出口』の政府系金融機関の改革に取り組んでまいります」衆議院総選挙で圧勝した小泉首相は、所信表明演説で私の目の前で宣言しました。いよいよ「改革の本丸」とされた郵政は今年10月に民営化される予定で小泉郵政改革は総仕上げとなります。さらに、資金の『出口』である政府系金融機関の改革も時期が迫ってまいりました。改めて政府系金融機関の改革を振り返ってみると、8つの政府系金融機関は所管官庁の役人や族議員らの抵抗に遭い延期を余儀なくされましたが、何とか平成17年11月に念願の統廃合を決めました。日本政策投資銀行と商工組合中央金庫は完全民営化し、公営企業金融公庫は廃止し地方に移管されます。残りの5つの政府系金融機関は1つに統合されます。平成20年10月から新体制に移行する計画です。

ところが、すんなり中央官僚に受け入れられたわけではありません。所管の政府系金融機関がなくなるということは退職後の天下り先がなくなることを意味します。中央官僚がおもしろくないのは当然で、一部では天下り死守に向け水面下でいまだ抵抗を続けているのが実態です。例えば、ここにきて「地方間格差」を盾にして、地域経済を支える中小企業にとっては中小企業金融公庫を重要視していく意見が出始めました。しかし、政府系金融機関改革を引き継ぐ安倍総理は改革姿勢を鮮明にするため、組織のトップには民間人の登用を強く主張しました。塩崎官房長官も「政府系金融機関改革の流れを逆戻りさせない」と強調しています。

たしかに、わが国の中小企業が産業界におけるシェアは99%、従業員数も70%を占めます。経済活力や地域活性化の礎は中小企業であることは確認しておく必要があります。社会資本が不足していた太平洋戦争後のような状況の中で、政府による政策金融を通じた資金調達によって日本企業は高度成長を果たしました。しかし、民間経済が十分に成熟し、民間金融が十分に発達した現代日本では、政策金融が特段に必要とはいえません。

よって、統合して1つになる政策金融の役割は「民間金融の補完」と「セーフティーネット」に限定し、規模も組織も必要最小限のものにすべきでしょう。また、「セーフティーネット」に関しては、昨年の資金業制度改革により金利引き下げが3年後に行われた時点で、一時的に貸し渋り・貸しはがしを受けてしまうであろう個人・零細企業の受け皿としての役割を期待するものであります。