どうなる北方領土

 なぜ唐突に北方領土問題を書くかというと、私が現職中に所属していた衆議院外務委員会で、新しい外務委員長に鈴木宗男氏が任命されたからです。これには驚きました。連立与党でもない鈴木氏が委員長になれたのは、北海道における民主党との選挙協力の産物だと理解しましたが、ここには大きな危険をはらんでいます。北方領土返還問題について、鈴木氏は「二島先行返還」論者です。北方四島のうち歯舞群島・色丹島の先行返還を実現し、その後に残りの国後島・択捉島の返還を迫るという立場です。私は「四島一括返還」を支持しています。その理由は以下の通り。

    同時期に、武力によって占領された北方四島は一体のものである。

    分割することによって間違ったメッセージを与え、交渉の材料とされやすい。

    二島返還によって、ロシアは決着済みと幕を引く。

    二島返還によって、国民の関心が薄れ最終決着はより遠のく。

    「領土」は、「国民」「主権」とともに国家の要素であり妥協はできない。

 

いうまでもなく、北方領土は不法に奪われた我が国固有の領土であり、「法と正義」の原則によって返還させなければなりません。相手に返す気がないのであれば、国際法上では武力によって取り戻すことが正当な行為として認められています。しかし、日本では憲法によってその正当な行為を禁じています。プーチンは帝政ロシア体制へと先祖帰りをしつつあり、一度奪った領土は返す気が全くないようです。現内閣では憲法改正も困難であることを知っているでしょう。

現在の日本が採るべき道は、鈴木氏が言うような二国間による「二島先行返還」交渉ではありません。もう無駄な交渉は止めにします。徹底して国際社会に侵略行為を訴え続けることです。以前にイラクがクウェートを侵攻した際に、多国籍軍によって阻止しました。多国籍軍編成の根拠は1941年の「大西洋憲章」です。それは、戦争の勝者となっても敗者から領土を奪わないという宣言を含みます。第二次世界大戦後の世界秩序を維持する規範になっています。「大西洋憲章」を受け入れて連合国入りしたにもかかわらず、規範を無視して他国領土を奪った唯一の国がソ連(ロシア)です。

「ロシアは大西洋憲章に反した侵略国である」ということを、国連やサミットやあらゆる国際舞台で徹底して訴え続けることです。KY(空気が読めない)と言われようが気にしない。ロシアの代表とは握手はしない。笑顔も見せずに毅然とした態度で振舞う。金銭で解決するなど条件交渉の素振りを見せない。北朝鮮問題と同様に『対話』だけでなく『圧力』が必要です。完全にロシア側に負い目があるのですから。気長にロシアからの平和条約交渉提案を待ちましょう。

その代わり、日本は国際貢献などの努力を重ねて経済力以上の道徳的権威を高め、世界から尊敬される国になる必要があります。島民だった皆様にはご迷惑を掛けますが、それが「大義」ではないでしょうか。