投票年齢と成人年齢

 

一昨年に成立した国民投票法(憲法改正手続法)では、投票権年齢を十八歳以上と定めました。そして、2010年までに投票年齢に関連する必要な条文を改正するとしています。

 

策定にあたっては、自民党素案では二十歳以上、民主党素案では十八歳以上になっていたところを、この部分では断固として譲らない民主党の意見を取り入れました。私は投票年齢を十八歳に引き下げるのには反対しました。理由は、昔の日本人と違って現代日本人は身体と精神年齢にアンバランスが生じてきていると感じていたからです。

 

しかし、憲法改正の発議には総議員数の三分の二の賛成が必要なので、やむなく受け入れた次第です。「憲法改正に向けての最大のチャンス」とみて大同小異という判断でした。本来は「投票年齢と成人年齢は同じ」であるべきところです。今から思うと「投票年齢と成人年齢は別」という苦肉の策でしたね・・・。

 

ところが、話が違ってきています。法制審議会は二十歳と規定している民法の成人年齢について「十八歳に引き下げるのが適当」とする答申を千葉景子法務大臣に提出しました。ちょっと待った!

 

国民投票法での投票年齢を十八歳以上とすることは認めましたが、民法改正による成人年齢の引き下げまでは承認していません。国民の合意があるわけでもない。民法と連動する成人年齢に関する法律には、公職選挙法、喫煙禁止法、飲酒禁止法、競馬法、銃刀法、少年法など多岐に渡ります。成人になれば消費者金融からの借り入れも可能になります。

 

戦国時代では十三歳で元服した若武者が戦に出陣しました。大東亜戦争では十代後半の特攻隊員が出撃しました。知覧の記念館で遺書を読むと、若い隊員の意識の高さや責任感に圧倒されます。米国の成人年齢は十八歳。ベトナム戦争での徴兵年齢に基づくものです。

 

世界の大勢は「国家への義務を果たせること」を前提に成人年齢を決めています。私は日本における成人年齢は「自分のすることに責任をもち、国家への義務を果たせる年齢」だと思います。二十歳を引き上げることはあっても、引き下げることはできないのではないでしょうか。

 

誤解を恐れずに言えば、高校時代(十八歳)まで運悪く日教組教育で仕込まれた若者が、そのまま選挙権を行使したほうが良いと考える輩がいるのでしょうか。また、消費者金融業界にとっても大きなチャンスなのでしょうか。成人年齢を拙速に引き下げて、将来に禍根を残すことがあってはなりません