脱「ゆとり教育」路線

1997年、当時の文部省は受験戦争を招いたのは「詰め込み教育」だと反省し、「ゆとりのある充実した学校生活の実現」を提唱しました。

いわゆる「ゆとり教育」の始まりです。

徐々に学習内容が減らされ、2002年度に実施された学習指導要領では「完全週休2日制」の導入に併せて学習内容を3割削減されました。

ここに「ゆとり教育」制度が完成しました。2012年度(今年度)に路線を転換するまで「ゆとり教育」は続けられました。

したがって、2002年度〜2011年度の10年間に義務教育を受けた世代は学力低下が顕著です。国際学習到達度調査を見れば一目瞭然です。

今年度から小学校で、来年度から中学校で新学習指導要領が実施されることは先日書きました。ここでは来年度から10年ぶりに全面的に見直し新しくなる中学教科書について少し詳しく紹介します。

「ゆとり教育」制度が完成した2002年度供給の教科書と比較すると、数学科は63%、理科は78%厚くなります。全教科平均でも36%増です。内容が充実している事は確かです。

まず社会科ですが、個人的には歴史認識の点で、まだまだ問題がある教科書が多いと感じていますが、尖閣諸島の問題もあり領土に関する記述が大幅に増加していることは確実な前進と言えます。

国語科では、文体が難しいとして姿を消していた文豪が復活しています。森鴎外が全社で出揃い、夏目漱石や芥川龍之介の作品も目立ちます。中学から文語体に親しむことは良いことです。

数学科では、球の表面積・体積(1年)や2次方程式の解の方程式(3年)、有理数・無理数(3年)などが、通常の学習内容として復活しました。この10年間は学校で教えられなかった事が驚きです。

理科では、「原子の周期表」(2年)や「生物の変遷と進化」(2年)や「イオン」(3年)など、私達(昭和44年生まれ)が高校で習った内容が中学に移行しています。さらに、原発事故で関心が高まったので「放射線」(3年)が30年ぶりに復活するとのこと。理科は難しくなりますが、たくさんのノーベル賞受賞者が増えることを祈ります。

「ゆとり教育」とは完全に決別し、学力を重視する方針へ転換した事については評価します。安倍内閣当時に「教育基本法」を改正できた成果です。

問題は、「ゆとり教育」に学んだ世代が教員となり、自ら学習していない内容を教えることが出来るのかどうかでしょう。

「失われた10年」の影響はまだ続きそうです。