菅義偉政権の1年の成果

「こんなに仕事をした政権はない」小泉環境大臣の言葉ですが、実際はどうだったのでしょうか。菅総理の補佐官として官邸で勤務している私がこの一年間を振り返り、ファクト(事実)として記録しておきます。

◎新型コロナ対策に全力。医療体制を確保し、感染防止を徹底するとともに、感染対策の決め手となるワクチン接種を進めてきた。7月末までに希望する65歳以上の高齢者のワクチン接種を完了。3000か所の職域接種を含め、6月以来、1日100万回を超える接種を実現。8月末に全国民の5割近く、9月末に6割近くの2回接種を行い、現在の英米なみに近づく見通し。重症化が防げる画期的な中和抗体薬を1万人以上に処方。入院しなくても使えるように、外来でも使用可能とした。この中で、新型コロナの影響を受けた方々の声に耳を傾け、徹底して支援。事業者の人件費や資金繰りへの支援、困窮する世帯への支援を行う。また、9月には、ワクチン接種が進展したのちの社会経済活動の規制の緩和の在り方について検討し、基本的な考え方を提示する。

以下、時系列に記します。

1. デジタル庁発足 (20年9月30日準備室発足、21年5月12日関連法成立、9月1日発足)昨年の総裁選で御約束して1年弱という異例の短さで「デジタル庁」を発足。強力な司令塔として、デジタル化により暮らしを便利に。マイナンバーカードを使って、引っ越しや児童手当などの申請が自宅からオンラインでできるようにする。

2.不妊治療の保険適用(20年9月検討開始、21年1月助成引き上げ)共働きで頑張っても、一人分の給料が不妊治療に消えてしまうとの声に応えるため、今年1月から、補助 制度の所得制限を撤廃して、補助する金額は倍増( 1回15万円→ 30万円)、回数も増やした。来年度から保険を適用して、若い人にも使いやすくする。

3.携帯電話料金の値下げ(20年9月検討開始、20年末 大手3社新プラン発表)法改正などにより、利用者の方々が携帯会社の乗り換えを簡単にできるようにして、競争を促進。昨年末には、大手3社が従来より6割以上安い料金プランを発表。家計負担は4300億円軽減。

4. 初外遊でASEAN 訪問(20年10月18日~20日)インド太平洋地域の中心に位置するアセアンは、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた取組の要(かなめ)。「インド太平洋国家」である日本として、地域の平和と繁栄に引き続き貢献していくとの決意を明確に発信した。

5. 2050年カーボン・ニュートラルを宣言(20年10月26日施政方針演説)政権発足直後に「2050年カーボンニュートラル」を決断。温暖化対策は経済の制約ではなく、投資や雇用を生むものだと発想を転換し、成長戦略の柱に。洋上風力、水素、蓄電池などの技術開発や投資を進め、2030年に140兆円の経済効果を見込む。 

6.RCEP締結(20年11月15日署名式)中国を含めたRCEP協定参加国のGDPの合計、貿易総額、人口のいずれも世界全体の約3割を占める。昨年秋の協定署名、そして先の通常国会での承認は、自由で公正な経済秩序の形成に向けた、画期的で重要な一歩となった。

7. 国土強靭化 5年15兆円(前例のない長期コミットメント)  (20年12月11日閣議決定)ここ数年、大規模な水害が頻発。「5か年対策」により「5年で15兆円」を約束。川底の工事(しゅんせつ)や、役所の縦割りを解消したダムの事前放流の一元化などで、豪雨被害の軽減に取り組む。

8. 若い世代のための医療費窓口負担見直し(20年12月15日閣議決定)若者と高齢者で支え合う社会保障改革の第一歩として、75歳以上の高齢者のうち、年収200万円以上の方々の医療費の2割負担をお願いし、現役世代の保険 料負担を720億円軽減。

9.2025年大阪・関西万博に向けた準備(20年12月21日第1回国際博覧会推進本部開催)国際博覧会推進本部を設置し、第1回会合を開催。『いのち輝く未来社会のデザイン』と『いのちを救う、いのちに力を与える、いのちをつなぐ』がテーマの同博覧会に向けた政府の基本方針を決定。

10.コロナ禍での雇用対策を徹底強化 (21年2月5日産業雇用安定助成金創設)雇用調整助成金の特例措置を本年9月末まで延長したほか、労働者向けの休業支援金・給付金についても対象を拡大。加えて、在籍型出向を活用して雇用維持を図る事業主(出向元・先)を支援する「産業雇用安定助成金」を新たに創設するなど、「失業なき労働移動」を実現するための取組を強化。

11. 農林水産品の輸出額が過去最高 (21年2月5日20年輸出額公表)農水省、厚労省などの縦割りを解消し、認可手続きなど、輸出のハードルを改善。産地の支援も行い、新 型コロナの中でも昨年の輸出額は9,000億円を超えて、過去8年で倍増。本年も対前年30%増。

12. 孤独・孤立担当大臣の新設(21年2月12日)新型コロナの中の人々の不安に寄り添うため「孤立・孤独担当大臣」を創設。自殺防止、子供食堂など、NPOの活動に異例の60億円の支援を決定。行政と民間団体との連携を強化し、きめ細やかなセーフティネットを構築。 

13. バブル崩壊後の株価最高水準(21年2月15日)株価も本年2月には3万円の大台を超え、その後も27000円台と順調に推移。30年ぶりの高水準。昨年度の税収は過去最高に。 

14. 初の QUAD 首脳会議(21年3月12日)3月、日米豪印(クワッド)会議を、初めて閣僚級から首脳級に格上げして開催。普遍的価値と戦略的ビジョンを共有する4カ国のリーダーが、「自由で開かれたインド太平洋」の具体化に向けた決意を一致して発信する重要な機会となった。

15.10兆円大学ファンド創設(21年3月26日第6期科学技術・イノベーション基本計画閣議決定)大学の国際競争力の強化、わが国成長への貢献という長年の課題に対応するため、10兆円の大学ファンドを創設。運用益を、トップレベルの大学の研究に充てる。

16. 小学校35人学級決定 (21年3月31日改正法成立、4月1日施行)40年ぶりに「義務教育標準法」を改正し、公立小学校の1クラス当たりの定員を40人から35人以下に引き下げ。少人数によるきめ細かな教室づくりを実現。学校の先生方の負担にも配慮し、長年の議論に決着をつけた。

17.教育のデジタル化(21年4月1日)21年4月から、「GIGAスクール元年」の施策として小中学校における一人一台端末環境下での学びを本格的にスタート。

18. こども庁開設準備(21年4月1日検討指示)担当省庁が複数にまたがる子供に関する施策について、役所の縦割りを打破して、真に子供の視点に立った政策に取り組む省庁横断組織の創設の検討を党に指示。

19. 福島第一原発処理水問題に結論 (21年4月13日関係閣僚会議で基本方針決定)福島第一原発のアルプス処理水について、6年以上にわたり処理方法の検討が続けられてきたが、国内 の規制基準の40分の1となる高い安全性を確保し、事業者の風評対策を十分に行う前提で、海洋放出  が現実的と判断。

20. 日米同盟の強化(21年4月16日日米首脳会談)4月、バイデン政権発足後、初の外国首脳として訪米し、日米同盟の固い絆を力強く発信。新型コロナ、   気候変動などのグローバルな課題、中国や台湾、北朝鮮の拉致問題などにつき率直に議論し、首脳声明にも反映できた。声明での台湾への言及は52年ぶり。 

21.「慰安婦」という用語用いることが適切と閣議決定(21年4月27日質問主意書答弁閣議決定)政府が質問主意書(馬場伸幸衆議院議員)に対し、「『従軍慰安婦』という用語を用いることは誤解を招くおそれがあることから、『従軍慰安婦』又は『いわゆる従軍慰安婦』ではなく、単に『慰安婦』という用語を用いることが適切である」と答弁。今年度以降の教科書検定で当該政府見解が反映される見通し。

22.わいせつ教員への厳正な対処(21年5月28日新法成立、6月4日公布)児童生徒を教育職員等による性暴力から守るため、これを禁止し、一度行った教員が教壇に戻ってくることのないよう、教員免許が失効した者のデータベースの整備や教員免許の再授与を制限する法律を制定(議員立法)。

23.ワクチン外交 (21年6月2日ワクチン・サミット、6月4日台湾への第一弾分到着)国内接種に必要な量を確保しつつ、ワクチン外交にも注力。6月にはワクチン・サミットを主催し、「途上国人口の3割分のワクチン確保」との目標の達成に貢献した。台湾やアジア諸国などに既に2300万回分の供与を実施し、今後も拡大していく。

24. 男性育児休業取得 (21年6月3日改正育児・介護休業法成立、22年4月1日から段階施行)出産・育児の負担が女性に偏る中で、男性の育児参加を進める。男性国家公務員には1か月以上の育休取得を求め、結果として平均50日取得されている。法改正により、民間企業でも、男性が育休取得しやすい職場環境を義務付け。

25. 国民投票法改正(21年6月11日成立、9月18日施行)憲法改正に必要な手続きを定める改正国民投票法が、法案提出から約3年を経て、通常国会で成立。

26. 英国 G7の成功に貢献 (21年6月11日~13日)6月、英国でのG7では、普遍的価値を共有するチームとしての結束を確認し、世界が直面する重要課題につき率直に議論した。中国をめぐる課題についてのセッションでは議論を積極的にリードし、その成   果は首脳宣言に反映された。

27. 重要土地等調査法(21年6月16日成立、22年9月全面施行)自衛隊の施設の周辺などの土地について、不適切な利用を防ぐ法案を通常国会で成立させ、安全保障上重要な土地を守るべきとの長年の議論に決着をつけた。

28. オンライン診療2022年度解禁決定 (21年6月18日規制改革実施計画閣議決定)住んでいる場所にかかわらず、医療が受けられるように、オンライン診療を大幅に拡大。これまでは、同    血圧や糖尿病のみで、初診は対象外。来年度からは、初診も対象となり、対象となる病気の限定もなくなる。

29. 最低賃金の引き上げ率過去最高へ(21年7月16日中央最低賃金審議会答申)今年の最低賃金は史上最大の28円、3.1%アップ。非正規労働者をはじめ、新型コロナによる賃金格差を是正。引き上げの環境整備のため、飲食・宿泊を中心に、雇用調整助成金などによりきめ細かく支援。

30 . 黒い雨訴訟上告断念、 救済措置 (21年7月27日上告断念の総理談話閣議決定)84名の原告に被爆者健康手帳を発行。さらに、原告以外でも同じような事情にあった方々については、訴訟への参加・不参加に関わらず、認定し救済措置を講ずる。

31 . 東京五輪・パラリンピック (21年7月23日~9月5日)五輪には約1万1,000人、パラリンピックには約4,400人の選手が参加。国民の命と健康を守るために、感染対策、水際対策、セキュリティ対策などを徹底し、安全・安心な大会を実現。開催国としてその責任を果たした。また、東日本大震災からの復興五輪として立ち直った被災地の姿を発信した。