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中国の海洋進出が著しいとし、6月に過去最大の中国艦艇11隻が沖縄近海を通り、フィリピン東方で軍事訓練を行ったことを例示したり、試験航行が間近に迫った旧ソ連製の空母の写真を掲載するなど、一連の行動を「高圧的」だと表現しています。しかし、驚くことに「高圧的」な態度の具体例である尖閣諸島問題について一切記述していません。あり得ません。全容解明を望まない官邸からの圧力かあったかどうか知りませんが、国家として領土問題に向き合う姿勢を示さなければ、また中国につけこまれる隙を見せることになります。
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中国に近い南西諸島の防衛を強化するとしています。自民党政権下での「防衛大綱案」にも記述していました。南西諸島は陸自の空白地帯なので、与那国島に約1千人規模の部隊を全国から機動的に展開するとしています。しかし、島嶼防衛専門部隊ではないうえに、先述の通り「動的防衛力」の実態は情けないものがあり説得力がありません。
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サイバー攻撃への対応を明記しています。政府や自衛隊へのサイバー攻撃が「国家の安全保障に重大な影響を及ぼしうる」と防御体制を強化する重要性を強調しています。しかし、分析と努力目標を掲げているに過ぎません。米国は既に昨年5月に「サイバー司令部」を創設し、今年7月にはサイバー攻撃を「戦争行為」とみなし軍司報復も辞さない新戦略を発表した。残念ながら我が国の「素人」防衛大臣では思いつくことのない発想でしょう。
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北朝鮮について、高濃縮ウランによる核兵器開発を「推進している可能性がある」と分析しています。また、ロシアについて、北方領土での部隊強化の動きを取り上げています。お題目を唱えているだけで「だから国家として何をするのか」が示されていません。
東日本大震災での対応で示したように、自衛隊は組織として十分に機能することが証明されました。しかし、主任務である国防に関しては、高度な政治判断が必要であり、シビリアンコントロールの意味も理解していない防衛大臣を擁する政権下では自衛隊を使いこなす事さえできないでしょう。不安定な極東アジアにおいて我が国を守れるとは到底思えません。
これは政治の責任です。
「自らの国は自らで守る」その気概こそ大事であることを痛切に感じた「2001年版防衛白書」でした。
【写真】スポーツに適した季節になりました。高齢者もグラウンドゴルフに熱が入ります。