●自民党総裁選挙を受け、5年5ヵ月振りに新しい総理大臣を指名すると同時に、国の基本に関わる重要な法案を成立させた節目の国会となりました。この国会では、短い会期を有効に使い、衆参与党結束のもと、継続や新規の重要法案を着実に処理することができました。とりわけ重要とされたのが、先国会より継続となっている「教育基本法」と「防衛省昇格法」でした。
「教育基本法」は、昭和22年の成立以来初の改正案であり、最優先課題として位置付けられました。与党は野党側の主張を柔軟に受け入れ、公聴会・地方公聴会・参考人質疑を含めた総質疑は106時間16分に及びました。これは「日米安保条約」「沖縄返還法」「政治改革関連法(小選挙区比例代表並立制)」「郵政民営化法」に次ぐ、5番目の長時間審議にあたります。残念なことは、民主党が特別委員の名簿を提出しないなど冒頭から抵抗し、法案内容と直接関係のない未履修やタウンミーティングの質問を繰り返し、終盤に至っても修正協議に応じないなど、政権交代を目指す政党とは程遠い対応を取り続けたことでした。野党が締め括り総括質疑を欠席するなか、与党はやむなく審議を進め、粛々と手順を踏んで採決を行いました。野党は採決の無効を主張したが、河野洋平議長から「委員会運営に瑕疵はない」との表明がなされました。
「防衛省昇格法」においても、法案審議の条件を要求しておきながら、その一方で委員会の責任者である理事との連絡がつかないなど、民主党の誠実さを欠いた国会運営の態度が気になりました。わが国の安全保障に関わる案件では、考え方に大きな違いはないはずですが、党利党略を持ち込んでしまったことで混乱しているように感じました。結局は衆議院の9割を超える圧倒的多数の賛成で法案を送付することができました。内外で多くの実績を積み上げている自衛隊活動にとって、また同盟国に信頼され得る安全保障体制の構築に向けて喜ばしいことであります。
この国会で成立した主な法案として、北海道を地方分権特区とする「道州制法」、地方分権の基本計画を定める「地方分権推進法」、受託者の義務や受益者の権利を整備する「信託法」、消費者金融による多重債務問題を解決する「貸金業規正法」、入札談合防止と罰則を定める「官製談合防止法」、湯沸かし器やシュレッダーの事故を防止する「消費者生活用製品安全法」、北朝鮮に対する制裁措置としての「外為法輸入禁止」と「特定船舶入港禁止」、耐震偽装事件を踏まえ資質向上を図る「建築士法」、外資比率50%超の企業の献金を5年以上国内上場している条件で解禁する「政治資金規正法」、派遣期間を1年間延長する「テロ対策特措法」などがあります。新規提出の閣法・条約・承認案件・議員立法はすべて成立し、立法府としての役目をしっかりと果たしました。
継続手続きを取ったものとして、修正協議で大筋の合意を見た「憲法改正手続法」、国際的組織犯罪防止に資する「条約刑法」、保護処分の見直しを整備する「少年法」があります。厚生労働委員会の社会保険庁関連法案は、与党国対委員長より柳澤厚労大臣に対して、国民に信頼され得る年金制度に資するよう組織解体と法案の新規提出を要請し廃案としました。また、北朝鮮による核実験実地の発表を受け、衆参両院で迅速に制裁決議を採択しました。
会期末になって、「教育基本法」「防衛省昇格法」の成立を阻む目的で、野党から安倍内閣不信任決議案と麻生外相不信任決議案、参議院には伊吹文科大臣問責決議案が提出されました。すでに参議院の委員会で可決されているこれらの重要法案の成立を確実なものとするため、与党の賛成で4日間の会期延長を議決しました。この間に与党は一致結束して野党提出の決議案を粛々と否決しました。
参議院選挙を夏に控える来年の通常国会に向け、多数の国民の負託を受けている自覚と責任を痛感し、より安定した国会運営ができるよう、いっそうの努力をしていく覚悟です。