急がば廻れ

ソ連崩壊によって資本主義は共産主義に対して勝利を宣言しましたが、現在の日本では資本主義を見つめ直す時期だと感じます。一言でいえば、「金融資本主義」から「モノ作り資本主義」への回帰です。

環境が目まぐるしく変化していくグローバリゼーションの時代において、「時間」との戦いが資本主義を転換させてしまいました。金融はカネでカネを買う商売なので時間が掛かりません。対して、モノを作ってカネを回収するには相当の努力と時間を要します。汗水流してモノ作りに励む人の脇で、PCを叩いて瞬時に大金を手にする人が存在し、どちらが評価されるかと云えば、後者であるのが「金融資本主義」です。

しかし、金融資本主義で栄えている人々は、日本人が時間を掛けて稼いだ元手で博打をしているように感じます。ゴールドマン・サックスなどアメリカには金融資本主義の勝者が多く存在しますが、彼らはモノ作りで日本に敗北したから金融に逃げ込んだということを思い出すべきです。

本来、日本人はモノ作りが得意です。戦後、見事に経済復興を成し遂げ、世界第二位の経済大国になれたのは、高い技術力と勤勉さを持つ日本人がモノ作りに励んだ結果であることを忘れてはいません。今の慣れない金融資本主義のルールの下で悪戦苦闘するよりは、得意分野であるモノ作りへの原点に回帰したほうが健全ではないでしょうか。

政治でやるべきことは、時間を掛けてモノを生産していく崇高さを説き、そこに生きる日本人に自信を取り戻させることだと思います。景気回復や格差解消への対策として即効性はありませんが、『急がば廻れ』とはそういうことかも知れません。