今回の安保3文書の改訂にあたり、自由民主党安全保障調査会(小野寺五典会長)のもとで幹事長を務め、まずは自民党内の考えをまとめた提言の作成に携わりました。
https://www.jimin.jp/news/policy/amp/203401.html
その後、公明党との間の「与党国家安全保障戦略等に関する検討ワーキングチーム」のメンバーとなり、15回の議論を経て「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の3文書の合意に至りました。昨日(令和4年12月16日)に閣議決定となりましたので報告させていただきます。
【「国家安全保障戦略」について】
https://www.cas.go.jp/jp/siryou/221216anzenhoshounss-j.pdf
2013年に初めて策定。当時は安倍総理大臣、小野寺防衛大臣のもとで、私は防衛大臣政務官でした。今回は初めての改訂となります。国際秩序が重大な挑戦に晒され、地政学的競争や地球規模課題への対応等、国際関係において対立と協力の様相が複雑に絡み合う時代。我が国は、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面しています。つまり、周辺国・地域が急速に軍備を増強し、力による一方的な現状変更の試みが増し、有事・平時と軍事・非軍事の境目が曖昧となり、また、経済・技術など多岐にわたる安全保障上の問題が生起しています。このような中、国益を守るべく、我が国が総合的な国力を有機的かつ効果的に活用していくことが必要です。この視点に立った「安保戦略」に基づく戦略的な指針と施策は、戦後の我が国の安全保障政策を実践面から大きく転換するものです。特に以下の7項目が着目すべき点となります。
①自由で開かれたインド太平洋というビジョンの下での外交の展開
②反撃能力の保有を含む防衛力の抜本的強化
③防衛力の抜本的強化を補完し、不可分一体のものとしての総合的な防衛体制の強化
④安全保障上意義が高い防衛装備移転等を円滑に行うための防衛装備移転三原則や運用指針等の見直しの検討
⑤能動的サイバー防御の導入とサイバー安保を一元的に総合調整する組織の新設
⑥海上保安能力の大幅な強化と体制の拡充
⑦経済安全保障政策の促進
また、2027年度には防衛力の抜本的強化とそれを補完する取組をあわせ、そのための予算水準が現在のGDPの2%に達するよう、所要の措置を講じます。我が国は普遍的価値に基づく政策を掲げ、国際秩序の強化に向けた取組を確固たる覚悟を持って主導していくことを「国家安全保障戦略」では記載しました。
【「国家防衛戦略」について】
https://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/guideline/strategy/pdf/strategy.pdf
米国の軍事関係者から「日本にはストラテジー(戦略)が無い」と常々言われていました。この度の「国家防衛戦略」は、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の中で、国民の命と平和な暮らしを守り抜くため、従来の防衛力整備等の基本的指針である「防衛計画の大綱」(いわゆる防衛大綱)に代わり、我が国の防衛目標、その達成のためのアプローチ等を包括的に示すために策定したものです。まず、防衛目標として、万が一、我が国への侵攻が生起した場合、我が国が主たる責任をもって対処し、同盟国等の支援を受けつつ、これを阻止・排除するといった3つの目標を掲げています。その上で、それを達成するためのアプローチとして、防衛力の抜本的強化を中核に、国力を統合した我が国自身の防衛体制を強化するとともに、日米同盟による抑止力と対処力を更に強化し、同盟国等との連携を強化する方針を掲げています。特に、防衛力については、相手の能力と戦い方に着目して、これまで以上に抜本的に強化することとし、今後5年間の最優先課題として、現有装備品を最大限有効に活用するため、可動率向上や弾薬・燃料の確保、 主要な防衛施設の強靱化への投資を加速するとともに、将来の中核とな る能力を強化する方針が示されています。具体的内容としては、以下の7つの重視分野を示しました。
①スタンド・オフ防衛能力
②統合防空ミサイル防衛能力
③無人アセット防衛能力
④領域横断作戦能力
⑤指揮統制・情報関連機能
⑥機動展開能力
⑦ 持続性・強靭性
その中で、我が国への侵攻を抑止する上での鍵となるスタンド・オフ防衛能力等を活用した「反撃能力」について、その意義や必要性等についての政府の見解も示されているところです。この他、防衛力そのものとしての防衛生産・技術基盤の強化、防衛力の中核である自衛隊員の能力を発揮するための人的基盤等の強化の方策についても示しました。
【「防衛力整備計画」について】
https://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/guideline/plan/pdf/plan.pdf
これまでの「中期防衛力整備計画」(いわゆる中期防)に代わり策定されるものです。従来の中期防で定めていた5年間の経費総額と主要装備品の整備数量を明示するとともに、防衛大綱が示していた保有すべき防衛力の水準を示し、中長期的な防衛力の整備計画を一 体的に定めるものとなりました。「防衛力整備計画」では、「国家防衛戦略」で示された防衛力の抜本的強化に当たって重視する「スタンド・オフ防衛能力」等の7分野を踏まえ、我が国への侵攻そのものを抑止するとともに、侵攻が生起する場合には、我が国が主たる責任をもって対処し、これを阻止・排除できる防衛力を構築することとしています。所要経費等として、今後5年間における防衛力整備の水準は、43兆円程度とされており、この規模は防衛力の抜本的強化を達成でき、防衛省・自衛隊がその役割をしっかり果たすことができるものと考えています。