あまり報道されませんが、先日の九州南部における梅雨前線豪雨災害では、陸上自衛隊の災害派遣により直接間接的に多くの人命が救助されました。
国会では、阪神淡路大震災の貴重な経験を経て自衛隊の災害派遣時における諸々の法的権限を改善しました。例えば、従来「知事の要請を受けて」自衛隊は災害派遣できるとなっていましたが、自衛隊は「自らの判断で」災害派遣できるようになり、これを担保するために、各市町村長・警察署長・消防署長等が自衛隊に災害の状況を通報できることとなりました。あるいは、現場に行く途中に路上にある障害物を排除できるとか現場において避難地域を設定できるとか災害派遣の実情に合わせ法的・制度的改善が図られました。これらは、自衛隊が災害派遣において即応性や実力を発揮する上で大いに効力を発揮できる措置であります。
しかし、未だひとつの問題が解決されずに残っています。「航空管制の制限」です。自衛隊の警告を無視して危険スレスレで取材をして特ダネをものにしたがるマスコミが後を絶ちません。特に山火事などでは、いつも多くのマスコミのヘリが縦横無尽に火災現場に突っ込んできて消火に当る自衛隊のへりと交錯し大変危険な状況が現出します。このままでは二次災害の発生は避けられません。
思うに、航空管制に関しては全般的には国土交通省(航空局・防衛庁・米軍等の利害が微妙に絡み合っており調整が容易ではありません。しかしながら災害派遣現場で活動中の自衛隊に対して「限定された空域の、限定された期間の航空管制権」を付与することは、法的・技術的に関係者の理解を得るのが可能と考えます。
よって、「災害現場における限られた地域の、かつ限られた期間だけ、派遣された自衛隊に航空管制の権限が付与される」という法整備を早急に実現する必要があります。マスコミ各社にしても、結局はその方が安全にかつ公平に取材できるはずであるし、国民の理解も得られるものと思います。