国会が閉会中にもかかわらず、「自民党金融調査会 貸金業制度等に関する小委員会」では積極的に議論が展開されています。いわゆる「グレーゾーン金利問題」についてです。日本の貸金業は、二つの上限金利により金利規制を受けています。出資法の上限金利(29.2%)と、利息制限法の金利(貸出元本額により年20.0、18.0、15.0%)です。出資法には悪質な貸金業者を取り締まる目的があり、上限金利を超える高金利は刑事罰の対象になりますが、利息制限法は賃借契約を民事で規定するもので20.0%を超えても刑事罰を問われません。こうした二重基準によって生じた20.0〜29.2%の間を「グレーゾーン」といいます。消費者金融会社などの金利がここに設定されているのは、刑事罰の対象にならないからです。
今回の、貸金業制度見直しの目的は、①多重債務者が自殺に追い込まれる事態を救済すること、②「ヤミ金業者」の追放、です。「ヤミ金業者」とは、出資法の上限金利を超える高金利で貸し付けるなど、貸金業規制法に違反する貸金業者をいいます。決して払うことの出来ない高金利で契約をした上で生命保険をかけて自殺に追い込む極めて悪徳な業者も存在します。
この点、貸金業界は、逆に今まで金利を下げすぎたことでヤミ金業者を増長させたと主張しています。今後、さらに金利を下げれば中小零細貸金業者は倒産し、大手業者も審査が厳しくなり、その結果として貸し渋りがおこり、真面目な利用者の利便性を損ないヤミ金業へ流れる人が増えると警告しています。
しかし、年間自殺者3万人のうち8千人が、はじめは正規貸金業者から短期・小口で借りた事をきっかけにヤミ金の餌食になってしまった多重債務者である一方、高額納税者の上位に大手貸金業の役員が顔を揃えている現実があります。また、莫大な広告費を使って「簡単で手軽なキャッシング」を至る所に大量宣伝して積極的に借金を促し、テレビCMなどで女性タレントや動物を利用して借金への抵抗感をなくすことを助長している日本の現状は、先進国として正常ではない気がします。
思うに、今回必要な貸金業制度の見直しは、ヤミ金業者を徹底的に追放する法整備を整えることは勿論、ヤミ金業へ流れる客層を大量生産している正規貸金業者にも一定の歯止めをかけることではないでしょうか。利用者が理解し難い「グレーゾーン」は、司法(最高裁判決)の要請に応えるためにも撤廃は避けられないでしょう。
「借りる人は自己責任があり借りたら返すのが当たり前」という意見はその通りだと思いますが、「貸さない親切」もあって然るべきであり、「勤労の尊さ」を再確認する契機になればよいと考えます。いよいよ明日は「上限金利」の議論です。